「筆者さん、宇ち多゛行かないとですよ!無くなりますよ!!」
「・・・ばれたか」
呑み話で何かと盛り上がる同僚さんから発破をかけられたのは先日の飲み会終わりのことでした。以前から興味がある素振りを見せるのに、一向に動き出さない私を見透かしていたのでしょうか。
時を同じくして呑んべ横丁の看板が外されたというニュースも耳に入ってくるから不思議なものです。
かくして宇ち多゛の行列や独自ルールに怯えていたリトル筆者を蹴り倒し、京成立石へ土曜の朝から向かったのでありました。今回はその時(2023年9月末)と以前訪問した際(2021年12月)の様子を比較しながら、再開発の進捗を追ってみようと思います。
そもそも京成立石って
都心から浅草線・京成線に揺られて20分。各駅のみが停車するこじんまりした駅が京成立石です。(本項 2021年12月撮影)
列車を降りると家に帰ってきたような安心感があります。肩肘はらずに散策していきましょう。
京成立石は、何と言っても駅前商店街のまち。駅南側にはご覧のようなアーケードが2列に延び、北側には青空商店街と、前述の吞んべ横丁という居酒屋密集路地を有します。
かつて水利に恵まれた立地により町工場が多く存在したことが商店街の形成に寄与したようで、これは近年飲み屋街として盛り上がる赤羽や蒲田と同じではないでしょうか。
ただ、立石は前述の宇ち多゛のような異彩を放つせんべろが点在しており、界隈では密かにアツイ街として認識されているのです。(最後に来店の様子もご紹介しています。)
小さな駅ではありますが、京成線は空港アクセスを担う大動脈。ひっきりなしに過ぎ去る列車によって、静かな街に心地よい生活音が溶け込み、寂しさを覚えることはありません。これって生活の上でも、呑んで一人帰路につく時にも(?)大切な要素な気もしますがどうでしょうか。
一方で地平を鉄道が走ることは、域内移動においては時間のロスが生まれるばかりです。そんなこともありまして、
再開発に合わせて京成立石駅は高架化が予定されています。用地買収はほぼ完了しているように見えますね。
南北の往来はしやすくなる反面、高架橋ができれば空の見え方も大きく変わることになるでしょう。
変化を待つ 個性を放つ街、これが 京成立石 です。
呑んべが市民権を持つ
ここからは立石の街並みを2021年の訪問時と2023年の時とに分けてご紹介していきましょう。
再開発がどのように街を変えてゆくかご覧いただければと思います。
2021年12月
まずは駅北側を見ていきましょう。駅と直交するように商店街が伸びています。足を進めたくなりますが、すぐ右手に曲がりましょう。
街のシンボルがお出迎えしてくれます。呑んべ横丁。
見栄をはることのない名称、看板の手作り感、どれも素敵じゃないですか。疲れた時にはこのような潤いが必要ですよ。
煤けた職住一体となった3棟の長屋?と2本の路地が横丁そのものです。かつては生活用品を扱うデパート的な存在だった物件に次第に居酒屋やスナックが集い、現在の形になったのだとか。
人々の暮らしが街まで染み出してきています。このような雰囲気も30年ほど前まで都内でも散見されましたが、今では懐かしさを覚えます。肉屋、魚屋、お菓子屋などがひとつ屋根の下に集まって、小さな市場のようなものを形成していてよく買い物に出かけたものです。
日中よりも夜の方が明るいかもしれませんね。横丁はお昼寝タイム。薄暗い雰囲気も、お昼寝には心地よい明るさかもしれません。
この眺めを見に来た方か、偶然出会ってしまった方なのかは分かりませんが、道行く人の視線を集めておりました。
横丁でも異彩を放つカラオケBAR 宙~さん。たしかに自転車が止まっていたら困ってしまいますね。
お昼からやっている店もチラホラ。
横丁を抜けて線路側へ。夜の街に日差しは少し眩しく映りました。
2023年9月
そしてその後の様子を追っていきましょう。ロシアとウクライナの戦争がはじまり、コロナは収束に進んだこの2年の間で立石はどのように変わっていったのでしょうか。北口を中心に巡ってゆきます。
北口商店側は全てフェンスに囲まれておりました。なんと。。
虫食い的に更地になっていく再開発は幾度か見たことがありますが、All or Nothing的に再開発をするケースは初めて見ました。
路地まで漏らさず。。すごいな。
誇らしげに掲げられていた呑んべ横丁の看板も木枠のみ残る状態となりました。寂しもありつつ、葛飾区が看板を保存するため、解体に先んじて取り外してくれたのだとか。良い仕事します。
横丁入口もご覧のとおり。以前の姿のまま、ひっそりその時を待っている様子。
横丁の行く末を気にされる方も多いようで、私以外にも何組かの方が撮影や様子見に時折いらっしゃっておりました。
本当に無くなってしまうんだなぁ。
以前のような昼の眠りにつく感じではなく、無音。多くの賑わいの声を受け止めてきた扉も、その役目を終え心置きなく開け放たれています。
以前は灯っていたのですが、もう輝くことはないのです。
商店街や横丁のみならず一帯全域がフェンスに取り囲まれておりました。最後に残った左手の江戸安さんも23年10月に現在地より移転予定とのこと。
立石に忘れられぬ想い出のある皆さんは今が最後のチャンスですよ。
アーケードも今のうち
呑んべ横丁が注目浴びる立石ですが、南側の2つの商店街もまたそれぞれ違った魅力を持っています。23年9月現在、再開発は南側においても大きな動きはありません。ただ、駅北側同様、再開発対象地域であることには変わりはなく、この姿もこの10年ほどで大きく変わってゆくでしょう。(本項 2021年12月撮影)
まずは立石駅通り商店街。チェーン店を中心とした店舗構成で、大山や十条、武蔵小山といった都内各所の駅前商店街の雰囲気となっています。
吞んべの街とはいえ落ち着いた昼の顔もしっかり持ち合わせています。この日は穏やかな冬晴れの一日で散策も心地よいものです。
京成線高架化の暁には南北の立石が結ばれることになります。
都内各所の商店街を雰囲気を一にしますが、一方で今後の展開は大きく異なります。いずれの地域も再開発地域と商店街が共存する形での再開発だったのに対し、立石では商店街を巻き込んだ形の再開発になっています。いずれの方法が街に賑わいをもたらすかは歴史が判断してくれるでしょう。
立石駅通商店街に並行して存在するのが立石仲見世です。こちらは個人商店中心に頑張っておりまして、下町独特の雰囲気を感じられる区画となっています。
青果店、魚屋や中には珍味屋まで飲食に関連する店舗が密集しています。今回コロナ禍中の訪問のため各店シャッターが下ろされておりましたが、23年に訪れた際は元気に各店舗で営業がされておりました。
両商店街の間を結ぶ十数mの路地にも地域の生活が息づいています。その中でも、
昔どこかで見かけた様なお肉屋さんの雰囲気を今に伝えてくれている愛知屋さん。最寄りにあったら肉食生活が習慣化するでしょう笑
スーパーが活躍する昨今において個人の生鮮食品店はとても珍しくなりましたよね。
量り売りの高揚感もありますし、
何よりお惣菜たち。空腹でもないのにコロッケを注文しまったのはここだけのヒミツです。
宇ち入りを果たす
最後に、尖りまくった立石の個性をご紹介です。立石に改めて来訪するきっかけとなったもつ焼き 宇ち多゛さんです。(本項 2023年9月撮影)
多くの呑んべを魅了するのは、美酒と美食と向き合う無二の店内空間ではないでしょうか。
基本会話は厳禁、店内にメニュー表もありません。独自の注文方法に最初は戸惑うでしょう。その代わり、大ぶりで新鮮なもつ焼きと食事を引き立たせる焼酎割りを非常にお値ごろに堪能することができるのです。そんなこともあって、
多くのファンの方々を抱えたお店となっています。10時の開店直後しかありつけない希少部位を求めて、連日行列をなしております。ちなみに上の写真は土曜日朝9時半の様子笑 その上、店頭に並んでいるのは朝7時半から配付される整理券を得た方々。。。。
特異な時間を共にする不思議な一体感も含めて、宇ち多゛の魅力なのでしょう。では彼らの言葉を借りまして、実際に来店 宇ち入りを果たそうじゃありませんか。私は素人なので、9時半から通常に並びます。
列に待つこと1時間。最低限の会話以外はもつを炭火で焼く音が響く店内へ招かれ、土曜の10時半から煮込みと梅割を頂きます。これら合わせて400円と、、そんなことありますか。
時折煮込み作る二代目さんから気遣いの言葉をかけられたりして、勝手なが繋がりを覚えてしまいます。その他、串を2皿4本、焼酎をお替りしまして、
タン生の酢がけを食べる頃には満腹、ほろ酔い状態に。お勘定1,500円で、無二の経験ができました。
再開発でハード面での立石は大きく変わってゆきますが、立石ならではの経験、雰囲気、これらは上手く将来の街にも受け継がれることを願うばかりです。
おしまい
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