2023年7月15日、JR田浦駅にやってきました。東京から横須賀線の普通列車で75分。三浦半島の腰部に位置する逗子と横須賀に挟まれた小駅です。その歴史は古く、特に隣駅の横須賀と共に軍港の玄関として街を支えてきたという生い立ちゆえに、興味深い造りとなっています。軍港×鉄道という関心事の掛け合わせをされては、こちらも行かないわけにはいけません。
GWぶりの3連休、「どこへ行くの」と聞かれて言葉に窮するのは、かような場所ばかりに行ってしまうからでしょうが、自分に嘘はつけません。かくして鎌倉へ向かう賑わいと共に田浦駅を目指したのでありました。
田浦駅の歴史
田浦の地にレールがやって来たのは1889年(明治22年)。長い鉄道の歴史の中でも初期の出来事に位置づけられます。大船・横須賀間の開業によるものですが、当時は田浦に駅は設けられませんでした。駅の開業はその5年後の1904年(明治37年)。これは日露戦争開戦の3か月後のことで、軍事的な必要性があったと思われます。
そんな当駅にやってくるのは最新車両のE235系。山手線にも採用されるまさにJR東日本の”顔”ですが、駅との年齢の対比が鮮明で小気味いいものです。
まずはホームの大船・東京寄りを見てみましょう。
田浦トンネル
田浦駅はホームの両端をトンネルに挟まれているかなり特殊な駅となっています。その上、トンネルがレンガ製ですからね。色々な意味で詰まった駅ではありませんか。
トンネル手前にJR東日本 歴史的建造物調査委員会なる団体によるトンネルの紹介がありまして、それによれば右側 下り線のトンネルは改修を経つつも横須賀線開業時から存在するものだそうで、案内板の両脇には当時の支え壁がそのまま残されています。御年135歳に迫ろうという勢いです。
駅名標とレンガのツーショット。現実味がありませんね、面白い。
誰だ、ジェンガしたヤツはっ
上を向いて歩いてみよう
トンネルで有名な田浦駅ですが、ぜひ「上を向いて歩く」も意識してみてください。味わい深い上屋が我々を守ってくれています。
改札の下部は堅牢に、
ホームの主要部分は優美に慎ましく。
こちらは古レールを活用していて、見るのも楽しい限りです。開業当時から残るものではないと思いますが、類似の意匠を持つ田端駅や水道橋駅の歴史も踏まえると、戦前から残るものではないでしょうか。
ということ往年の軍人さんたちもこの柱を眺めていたわけです。
七釜トンネル
最後に横須賀・久里浜方のホームも眺めてみましょう。
もちろんこちらサイドもホームがトンネルで打ち止めになっています。両端をトンネルに挟まれホームの長さを十分に確保できないため、本駅にやってくる11両編成の列車ではドアカットが行われます。それだけでも面白いのですが、最左側には使用されないトンネルがありまして、やはりネタに尽きない田浦駅であります。
3つのトンネルのうち最もベテランなのが、列進入してしていく中央のトンネル。開業時、明治22年に完成しています。続いて一番右手のレンガ製のトンネルで、1924年(大正13年)に複線化された際に完成。そして、利用を終えていて草生している一番左手のトンネルが実は最も新入りで、1944年(昭和19年)に完成しています。こちらは港湾施設への貨物線に使われていたもので、1998年(平成10年)までは現役だったんだとか。というわけで、明治・大正・昭和期のトンネルを一目で比較できる希少な場所となっています。なんだこの面白い駅は・・・
そんな貴重な往年の様子を横須賀市立中央図書館郷土資料室の皆さんが発信されていたのでご紹介させていただきます。
そして現在はこちら、
隔世の感ですね。。
ちなみに七釜トンネルを抜けた先には残された貨物線のレールを見ることができまして、その様子は後日まとめたいと思います。
最長老の七釜(しっかま)トンネル。
右と左のトンネルはおよそ30歳差。
右側のレンガ製はやはり美しいですよね。こちらが作られた大正期には、トンネルに装飾性を持たせる技術的余裕ができたということでしょうか。最後に改札外の跨線橋から両トンネルを見てお別れとしましょう。
つづく
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