高梁
この地名を読めるのは、岡山県民か鉄道ファンくらいなのではないでしょうか。そもそも「梁」が読めない。
正解は「はり」建物の屋根を支える水平方向の柱のことなんですね。じゃあこの街は、たかはり?ただ、そう簡単にいかないのが日本語の不思議。
ということで、今回は知る人ぞ知る 岡山県高梁(たかはし)市をご紹介。岡山市から車で1時間ほどの距離にあるこの街には、特徴ある古い街並みが、距離を置いて存在しています。そちらを楽しんできました。
高橋じゃなくて高梁
2019年8月9日、盆を控えた真夏日
高梁市の玄関口 備中高梁駅からスタートです。山陽と山陰を結ぶ幹線である伯備線の駅で、寝台特急サンライズ出雲も停車する拠点駅。駅舎には図書館がが併設されていて
誰かの脳内をのぞき見しているような気分ですね。スタバも併設されており、高梁市の気合の入れ具合が伝わってきます。
まさに高梁市の集客施設。機能がまとまった複合施設は「とりあえずあそこに行けばいいか」となるので便利で良いですな。案内所の方の紹介を受けお目当ての街並みを目指します。
城下町の名残を求めて
備中高梁駅と備中松山城のちょうど間に存在するのが石火矢町ふるさと村
かつての城下町にあった武家屋敷の雰囲気が今なお残っています。松本市には松本城、姫路市には姫路城があるように、一般的には
自治体名=城名
となる場合が多いわけですが、この高梁市にあるのは備中松山城。高梁城でばありません。はてはて。というのもかつて「松山」を名乗っていた高梁が、愛媛県松山市との松山争いに敗れた結果、かようなあべこべな状態になってしまったようです。
歴史を紐解くと、150年前の戊辰戦争に遡ります。備中松山藩(高梁市)、伊予松山藩(愛媛県松山市)共に幕府側として内戦を迎えますが、その結果は皆さんがご存じのとおりかと思います。
明治維新後の廃藩置県で各藩が県として置き換えられることになります。そこで両藩の松山被りが問題視されます。この時、新政府は戊辰戦争で早期に恭順の意を示した伊予松山藩を優遇。旧体制側についていた備中松山藩を高梁県に改名することで問題を解決するのでありました。まさに勝てば官軍です。
その後、備中松山側は、改称案としてかつて呼ばれていた高橋を検討しますが、「梁」の字を使ったほうが雅であるとした漢学者の意見を採用。ここに高梁が生まれたのでした。(高梁市HPを一部編集の上引用)
松山の二文字の思いもよらぬストーリーでありました。石火矢町ふるさと村の場所はこちら。
このほか頼久寺という寺院のそばを流れる紺屋川沿いの街並みも有名なのですが、なにを思ったのか撮影を失念。高梁もう一つの著名な街並み、吹屋へ向かいます。
ベンガラに染まる街
山に囲まれた高梁の市街地から山に分け入り車で30分ほど。吹屋はかつて銅鉱山として栄えた集落です。
趣ある案内所がお出迎えしてくれます。銅の採掘とベンガラと呼ばれる赤褐色の顔料生産で賑わいを見せた集落は、現在でも至る所で朱色に触れることができます。天然の染料としては、四国の藍染は見聞きしたことがありましたが、このベンガラの存在は当地で初めて知りました。
案内所の方曰く
屈託のない笑顔で私たち来訪者を迎えてくれていました。素敵な街の予感がしてきます。
そしていよいよ街の中心へ向かいます。
この地域特有の石州瓦とベンガラ塗りの木壁の家々が、温かな朱色の街並みを作り出しています。
陶磁器の赤絵とは、言ってしまえば赤色の絵の具のこと。
陶磁器に赤い線が描かれていたら、この吹屋のベンガラが使われている可能性があるということ。
この吹屋は重要伝統的建造物保存地区、通称重伝建に指定された地域です。日本各地に残るかような街並みを将来にわたり残していこうというもの。
こちらには、吹屋が銅山と共に歩んできたことを示す案内が掲げられており、案内にある三菱の玉垣が
日本各地の鉱山跡を訪れると、なにかと出てくるのがこの三菱財閥。財政再建破綻となった北海道夕張市、秋田県の
長崎県の
三菱は国家なり
という言葉がありますがまさにその通りで、戦前から戦後にかけて鉱物資源で莫大な富を生み出し、多くの労働者とその生活、ひいては国家を支えてきました。現在でも各企業に三菱の名が冠されておりますが、当時は今以上に存在感を持っていたに違いありません。
集落の最深部までは歩いて10分ほど。折り返して食事に
そば粉をふんだんに使った濃厚なおそばを楽しめました。
集落の銭湯か?
と思ったのは寡聞なわたし
こちらはツムラ製薬の漢方薬 中将湯の広告看板なんだとか。葛根湯というのは耳にしたことがありましたが、「湯」の字はお薬を意味するんですねぇ。勉強になりました。
さてさて、駅前にはじまった高梁巡りはこのあたりにし、一路、今宵の宿、島根県玉造温泉へ向かいます。そして明日は、一度中国地方の内陸 広島県三次市を経由し、再び日本海側を目指していきます。
つづく

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