国鉄太子駅跡 | 大戦と資源不足に翻弄された山間の小駅

関東

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中之条六合赤岩-重要伝統的建造物群保存地区で養蚕と江戸の歴史に触れる
前回はこちら八ッ場ダムを後にし、前から訪れてみたかった太子駅跡に向かいます!が、その前に道路わきに突如現れた重 伝 建の文字。思わぬ出会いだったので、ちょっと寄り道することにしました。六合赤岩地区明治期以降、殖産興業の旗...

太子駅跡

太子駅駅舎

最後に訪れたのが赤岩集落から車で5分ほどのところにある国鉄 太子駅跡。入場料200円を支払い見学します。ここには、

太子駅構内

ホッパー跡とそれに寄り添うように太子駅ホーム跡が復元されています。ここから現在の長野原草津口駅まで吾妻線の支線として太子線が1971年まで走っていました。主にこの近くに存在した群馬鉄山からとれる鉄鉱石輸送に使われていましたが、一般の旅客を乗せる列車の運行もあったといいます。吾妻線の支線扱いになっていますが、吾妻線の長野原草津口駅~大前駅よりもこちらが先に敷設されました。

太子駅駅名標

この太子線の生い立ちには先の大戦が大きく関わっています。1943年、戦時体制が取られる中で、輸入に頼っていた鉱物資源が不足しはじめます。そんな時に白羽の矢が立ったのがこちらの近くに存在した鉱脈です。政府は日本鋼管(現在のJFE)に採掘権を与え、群馬鉄山として整備し、採掘した鉄鉱石をこの太子線を使って川崎の工場地帯まで運ぶことを計画します。そして1945年1月、太子駅~長野原駅が日本鋼管専用線、長野原駅~渋川駅が省線 長野原線として開業、計画が実行に移されたわけです。

しかし無情なことに、というよりも幸いにしてというのが適切でしょうか、半年後に終戦を迎えることに。その後、残された太子線は国鉄に編入され、貨客輸送に使用されていましたが、1966年に鉄鉱石の枯渇で群馬鉄山の閉山が致命傷となり、その5年後に廃止されてしまいました。

最盛期には2,000人以上が従事した群馬鉄山。操業開始から閉山まで300万トン近い鉄鉱石が採掘され、日本の復興と高度経済成長にに貢献しました。右手に見える構造物は、鉄鉱石の積み込みに使われたホッパーです。かつてはご覧の通り

太子駅昔の風景

3層建てだったようです。近くには工場もあるなど、規模の大きな駅だったことが分かります。鉄山は当地から北方15㎞ほど離れた場所にあり、

太子駅ゴンドラ

この容器がつけられたスキー場のゴンドラのような設備で鉄鉱石を運んでいたようです。中之条町の職員さんという「駅長」さんの話によれば、ゴンドラは下の地図のオレンジ線のように動いていたとか。ただ、そのルート上にあるのが、草津温泉。かつてこの現場で従事されている方は、仕事がてらゴンドラに乗って、温泉に入りに行っていたなんてこともあったとかなかったろか。

いやぁたまらんですなぁ

地図を見ると、矢印の始点が公園になっています。群馬鉄山では露天掘りがされていました。採掘の終了後、跡地には鉄山に湧く強酸性の地下水で育まれたコケが群生しはじめ、現在は世界的にも希少な光景を見ることができるチャツボミゴケ公園として整備されています。冬季閉園のため、また訪れてみたいものです。

朽ちたコンクリート

太子駅のホッパー跡

ホッパーの内部。この眺めを見るためにここまでやってきました。良いですねぇ。

太子駅のむき出し鉄骨

ご覧のようにかなり劣化が進んでいるため、内部には入ることができません。戦時中の物資不足と突貫工事の影響でこのようになっていますが、さすが製鉄を生業とする日本鋼管製。しっかり鉄骨が入っているので、これでも比較的頑丈な作りのようです。群馬のタウシュベツ橋梁とも呼ばれることがあるとか。

太子駅のホッパーと貨車

太子駅ホッパー

見ていただいたとおり、廃駅としてはしっかりと整備されている太子駅ですが、廃止後からずっとこのような姿だったわけでもないようです。一時期は土で埋め立てられ、この上に野球場が設けられていた時代もあったとか笑
ここ数年で町が観光スポットとして整備するに当たり、掘り起しがなされ現在の姿になったようですよ。

駅舎に戻ってみましょう。

簡単な資料館とお土産屋さんのようになっています。写真には撮りませんでしたが、暖炉があったりしてなかなか落ち着く雰囲気。先ほどの「駅長」さんが歴史や現状など丁寧にご説明くださいました。ありがとうございます。帰宅の時間も迫ってきたためこのあたりでお暇

太子線廃線跡

太子駅から延びる道路を行きますが、これは太子線の廃線跡を転用した道路。長野原草津口駅までいくつかの構造物が残っています。

太子線トンネル隧道

こちらのトンネルも通り抜け可能です。太子駅と合わせて楽しませていただきました。

おしまい

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