オリンピック開催まで2年をきって参りました、今日この頃。都内各所では開発が進んでおりますね。今回はそんな五輪に向けて話題になっている羽田アクセス線その特集となります。
なんですか、羽田アクセス線て
そもそも羽田アクセス線とはなんぞや、と。それは、都内各所と羽田空港を結ぶ鉄道構想です。
現在、空港と都心部、都内の西部地区(渋谷、新宿、池袋)や臨海部を直接結ぶ鉄路はありません。五輪開催に当たり、羽田空港のアクセス向上のため、JR東日本がぶち上げたのがこの計画でした。JR東日本から拝借した画像は、その全容がまとめられております。
構想が現実となれば、新宿や新木場から羽田までの所要時間は、40分から20分、およそ半分になるとか。これはインパクトがありますね。現在、東京モノレールや京急がぶっ飛ばして、アクセスを担っているわけですが、その寡占市場にJRの新路線が風穴をあけることとなります。利用者としてもファンとしても非常にアツイ展開に。
そして今回注目したいのが3つのルートのうち「東山手ルート」です。
他の2ルートが埼京線やりんかい線といった既存路線を活用するのに対して、今回の主役ルートは休止路線を復活させるというちょっとしたイベントを伴っています。
実は、都心部と羽田空港近辺を結ぶ「線路」は、既に存在しています。ただ、その「線路」の一部は、20年近く放置された状態にある通称「大汐線」
かつて東海道貨物線の一部として、「大」井の東京貨物ターミナルと「汐」留にあった貨物駅を結んでいました。
汐留の貨物駅の廃止に加え、大江戸線の建設工事に際して本路線の用地を利用する必要があって、それ以来休止線となっていました。汐留の貨物駅跡には現在、日テレや電通本社ビルが建って、風景が様変わりしておりますね。
そんな大汐線をはじめとした、アクセス線となっていくであろう東海道貨物線を実際に見に行ってきました。
都会に眠る巨大廃線群
緑に飲まれている3本の線路が大汐線です。写真奥が田町駅方面。新幹線の回送線が大汐線と並走しており、超高規格路線と放置プレイ路線の奇妙なコントラストを楽しむことができます。
これだけの広大な土地が都心部で20年近く遊んでいるケースも非常に珍しいですね。羽田アクセス線が実現すれば、この風景も様変わりすることでしょう。
場所はこのあたり。
こちらは首都高湾岸線。奥に見えるのがお台場へつながる東京港トンネルです。夜は映えそうな風景ですね。
そして、この跨道橋の反対に目をやると、広大な東京貨物ターミナルを一望できます。奥には新幹線の大井車両基地も。周囲は工業地帯なので、よほどの物好きでない限り、訪れることもなく、眺めることもない景色に思えます。都心部からすぐの場所でありながら、人知れず東京の物流網を支えてくれているんですなぁ。
そして、写真の左下、小さなホームが見えますが、ここはJR東日本の研修施設だとか。
ちなみにこの貨物駅に並走するように都道が走っていますが、非常に幅員のある造りとなっており、これまた非日常的な風景。心地良く運転することができます。平日や夜半は多くのトラックが行き交うのでしょう。
望遠にしてみると、奥にお昼寝中の新幹線も見えます。この場所では無数に広がる線路群ですが、貨物駅の最南端部で最終的に一本の線路に収束していきます。
ここからは、大汐線という名称ではなくなりますが、引き続き東海道貨物線の区間です。地下に潜り、羽田空港をかすめて、鶴見地区へ向かいます。それがこちら
こちらが東京貨物ターミナル駅方面
そして羽田方面です。トンネル入口上に建つ大きな屋根をもつ建物は東京都の大田市場
水産物と言えば築地、そして豊洲なわけですが、こちらは主に花や野菜を取り扱っている市場なんだとか。
撮影時に気づきませんでしたが、市場の屋根になんかついてますね笑
市場グルメもあって、セリの見学なんかもできるそうです。観光には穴場の市場かもしれませぬ。撮影場所はこちら
こちらの跨線橋も非常に幅広であります。
線路はこの場所から数kmにわたって地下に潜り、顔を見せてくれません。
現在この東海道貨物線は、天空橋駅付近で羽田空港地区をかすめる程度で、空港の敷地内を通っているわけではありません。線路は、内陸部を走る東海道本線と合流するため、川崎の工業地帯を抜け、浜川崎駅からしばらく南武支線と共に歩み、鶴見駅付近へ向かっていきます。
これは別日に撮影した浜川崎駅構内の様子。右手の屋根が南武支線の浜川崎駅です。奥に描かれているオレンジ色の矢印が、東京貨物ターミナルから羽田を経て、やってきた線路で、現在も貨物列車が行き交う東海道貨物線です。
羽田アクセス線計画が本格化した場合、この東海道貨物線の大田市場の直下付近から分岐する新たな路線を建設し、ターミナル付近までトンネルで繋げようってことなんでしょう。
そうなれば、休日の閑散としたこの辺りの穏やかな風景も過去のものとなるでしょう。戦前から首都圏の生産活動を支えてきた京浜工業地帯が無くなるのは寂しくもありますが、その沿線に新しい街が作られていくのであれば、少しワクワクもします。近年稀にみる大規模鉄道プロジェクトである羽田アクセス線計画。今後も見守っていきましょう。
ということで、現在、羽田アクセス線の東山手ルートを追うことができる大田市場付近までのレポートでした。
が、
せっかくなので潜った線路がひょっこりしてくれる所にも少し行ってみようと思います。
川崎の臨海部へ
てなわけで先ほどのトンネルの出口がこちら。京急大師線の終着、小島新田駅付近、川崎貨物駅で再び顔を出してくれます。跨線橋の上から貨物駅方面を望むと、
あっ・・・
列車が潜る瞬間を綺麗に捉えることはできず笑 場所は、このあたり。
白い貨物列車は川崎市所有の車両のようです。市電や都バスなんかはよく耳にしますが、地方の自治体にもこんな鉄道部門があるんですねぇ。今度は、跨線橋から降りて、貨物駅を地平から探索してみます。
敷地内には小屋の近くに作業着なんかが干されていて、とても大都会川崎とは思えないゆっくりな時間が流れています。
東京貨物ターミナルと比べると、タンク車が並び、車通りも少なく工場地帯らしい雰囲気があります。かつては塩浜操車場と呼ばれていた川崎貨物駅
高度経済成長期、京浜工業地帯における工場用貨物の輸送量増大でキャパの限界を迎えた浜川崎駅を助けるべく開設されたとかなんとか。
現在、本駅から神奈川臨海鉄道が、埋め立てされた浮島・千鳥町地区に原料等を送り込んでいます。
この辺りまで来ると、人の生活感は希薄になり、工場での生産活動に特化した街並みが広がります。都心の近くに在る非日常世界(もちろん工場で働く人にとっては、これが日常なんでしょうが)
人が少ないこともあってか、非常にゆっくり時間が流れていくような、田舎とはまた違うのどかな雰囲気が
2017年に廃止となった神奈川臨海鉄道 水江線跡
貨物駅の近くに、当時のグーグルマップで不思議と緑に覆われた千鳥町というエリアがありました。既にここまでで半日近く工場地帯で過ごしています。無機的な人工物に食傷気味+工場の排ガスの筆舌し難いニオイと空気に鼻と喉がやられつつあったので、癒しを求めに向かってみることにしました。助けてくれぇ・・・
工場地帯やん・・笑
おしまい
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