秋田内陸縦貫鉄道完乗① 鷹巣⇒阿仁合 走る雪原パノラマ

東北

秋田県 鷹ノ巣

この地名を知ったのは15年前、寝台特急あけぼので青森に向かう道中でした。

上野駅停車中のあけぼの

2007年2月の寝台特急あけぼの

これまで連れ添った日本海に別れを告げ、米代川に連れられ、山に分け入る列車を迎えいれた駅が鷹ノ巣

「鷹がいるような場所なのか」

本州の果てに近づきつつあるのを実感したものです。

そして、本日2022年3月6日(日)、再びその鷹ノ巣へやってきました。
目的は、鷹ノ巣と角館を結ぶ秋田内陸縦貫鉄道に乗るためです。同線は国鉄の不採算路線をルーツに持つ全国で見られる一般的な第3セクター路線なわけですが、全長が100㎞近くと長大、有料の急行列車を運行し、有名Youtuberと協力したプロモーションを行うなど特徴的な路線として関心があり、一度その積極的な経営を覗いてみたいと思っていたのでした。

秋田内陸縦貫鉄道 運行経路(国土地理院標準地図を用いて作成)

秋田内陸縦貫鉄道概要

路線概要。移管後の新規開業区間を有する点も特筆すべき特徴だ(国土地理院標準地図を用いて作成)

鷹ノ巣に前泊

秋田から奥羽本線普通列車に乗り込み、18:20鷹ノ巣着。

今日は、鷹ノ巣に前泊し、明朝8:10鷹巣発の内陸線で、阿仁マタギに寄り道をしつつ、角館を目指します。

冬の夜の鷹ノ巣駅ホーム

15年前車窓から眺めただけの場所に、降り立つことになろうとは

鷹ノ巣駅に停車中の701系

ここまで連れてきてくれた701系電車

旅行者界隈ではロングシート車ということで評判が今一つの同車ですが、雪を物ともせず快走してくれました。

雪のJR鷹ノ巣駅

青森方面を望んで

秋田駅では曇天でしたが、鷹ノ巣はご覧の天気。
積雪も多く、厳しい気候なのが伺えます。

夜の鷹ノ巣駅駅舎

駅舎は国鉄時代からのものと思われ

駅からは徒歩で宿を目指します。
駅前からは商店街が伸びていますが、

夜の鷹ノ巣駅前商店街

雪国の夜は早いのか

雪の鷹ノ巣商店街

はたまた利用者が少ないのか

北秋田市鷹ノ巣商店街のアーケード

移動手段として列車の復権がない限り、駅前商店街は厳しいのかもしれない。

アーケードに救われながら、歩くこと30分

 伊勢堂岱温泉 縄文の湯

伊勢堂岱温泉 縄文の湯

本日のお宿に到着。変わった名前ですが、これは付近にある世界遺産 伊勢堂岱遺跡から取られたもの。

 伊勢堂岱温泉 縄文の湯の店舗内

旅行者も地元の方も利用しやすい温浴・宿泊施設

余熱を活用した?床暖房が心地よい施設でした。

そして翌日、

冬の 伊勢堂岱温泉 縄文の湯

昨日の風雪が嘘のように快晴に

北秋田市内を流れる米代川

米代川

良い1日になりそうな予感がしますね!
そしてやってきたのが、秋田内陸縦貫鉄道の鷹巣駅・・・のはずでしたが、雪道に時間を取られ急遽宿近くの西鷹巣駅から乗車することに。

秋田内陸縦貫鉄道西鷹巣駅前

街はずれに置かれた西鷹巣駅

冬の西鷹巣駅

簡易な造りとなっている。開業は内陸線移管後の1989年(平成元年)

1日の平均乗降客は8名。統計値に影響が出るかもしれない。

そして、

8:13 西鷹巣

西鷹巣に入線する阿仁合行き 普通列車

阿仁合行き 普通列車

なんとか阿仁合行きに「間に合い」ました←
列車は後ろ乗り、前降り、運賃後払い。単行気動車に揺られ、同線の拠点 阿仁合駅を目指します。

旅のお供は秋田犬

乗客は、私たちを含めて4名。内訳は私服の青年が1名、作業着のおじさまが1名、そして私たちです。平日朝、市街地から郊外へ向かう列車とはいえ、少し寂しいでしょうか。

ただ、この内陸線の車内は不思議と明るい印象を受けるのです。

秋田内陸縦貫鉄道の座席と車内

まずオレンジの座席がかわいらしい。模様をよく見ると

秋田犬!

さらに

Akita breed in the train

これは化粧室壁面。

akitainu

荷棚もわんこがたくさん

秋田内陸縦貫鉄道の路線図

座席横、窓枠下の小テーブルにも。車窓を眺めながら現在地を確認でき、嬉しい配慮である。

ただただかわいいじゃないですか。
これらは、今から5年ほど前、秋田犬っこ列車整備事業という秋田県と協働で行われた取り組みの1つ。インバウンド客をターゲットとして、内陸線を盛り上げることを狙ったのだとか。

地方のローカル線に乗ると、合理化の結果なのでしょうが、車内が無機的だったり、くたびれていたりと、気持ちが沈むことも少なくありませんが、内陸線はちょっと違いますね。良いですよ!

秋田内陸線の路線図

内陸線では、急行列車が2往復運行されている。

縄文小ヶ田駅。世界遺産 伊勢堂岱遺跡の最寄駅だ。

秋田県道325号線

沿線に手つかずの橋脚が残る

これは凍結となった大館能代空港へのアクセス道路となるはずだった橋脚です。
その工事中、伊勢堂岱遺跡が発掘されたため、道路建設は計画変更、北側を迂回するルートととなりました。

黄色い道路が県道325号。遺跡を強引に避けているのが分かる。(国土地理院地図から作成)

(2022年10月更新)
なお、2月までの期間限定で大館能代空港のキャンペーンで往復で最大10,000円のキャッシュバックが利用可能です。ぜひこの冬に内陸線の旅にご活用されてはどうでしょうか。
https://onair-cbcp.com/

さて、秋田犬の内装と共に内陸線の魅力の1つと感じるのが、前面・後面からの雪景色です。

AN-8800形最後部からの眺め

乗務員室横 最後尾からの眺め

秋田内陸線の雪景色

本州とは思えない雪景色

鷹巣を出てしばらくは林を何度もすり抜けていく

内陸線沿線の杉林

モデルのようなスタイルの木々が多い

秋田は、秋田杉のように優良な木材の産地として知られています。年輪が整い、美しさと耐久性を備えた秋田杉は、秋田藩の懐を潤したんだとか。良質な木材が採れる気候なのでしょう。

木々を抜けると白地に飛び出してゆく

8:32 合川

合川駅駅舎

8:32 合川(あいかわ)着

急行が停車する簡易委託駅(駅業務を自治体や個人が行う有人駅)で、沿線の拠点駅。阿仁合線開業と共に設置されています。対向列車行き違いのためしばらく停車です。

木柱の歪みが味わい深い

合川駅で列車を待つ人々

鷹巣市街への通勤・通学客だろうか

地元の足として利用されているようで一安心。先頭に移動し、対向列車を待ちます。
こんな風に各方向の眺めが楽しめるパノラマカーであります。

やって来たのは旧カラーの気動車

座席がほぼ埋まる混雑ぶり。意外だった。

ローカル線は休日の利用状況だけで評価・判断してはならないと教訓を得たのでした。平日朝夕に乗ると、その路線の最も重要な顔に触れられるんでしょう。

合川駅前地域活性化協議会の看板

こちらこそです。

再び雪原をゆく

堆く積もった雪。美しい眺めも日常となると苦労も伴う。

8:39 米内沢(よないざわ)着。鷹巣から15㎞南に位置する。

こちらも簡易委託駅。前身の阿仁合線の中でも、最初期に開通したのが鷹巣からこの米内沢までの区間です。

成田為三生誕の地の看板

同氏は戦前・中の作曲家

寡聞ながら初めて存じ上げたわけですが、どこかで聴いたメロディ。調べれば最近まで中学生の教科書で扱われていたようです。

米内沢を過ぎると阿仁川と寄り添いながら進む

阿仁川は先述の米代川に合流して、日本海に注いでいます。

8:47 桂瀬 発

西鷹巣で私たちの乗車後、初めての追加の乗客1名。
親子でしょうか。乗り込んできた若い女性をホームで見送る方がおりました。
この時間の利用者の属性はバラバラ。ただ、旅人が皆無のため、本来の内陸線の雰囲気を味わうには良いのかもしれません。

さて、列車は再び快調に南進していきます。

8:55 阿仁前田温泉

除雪された分岐器を見ると、保線員さんの苦労が偲ばれる。

8:55 阿仁前田温泉 着。鷹巣から45分25km

車窓で目にする歓迎の横断幕。気持ちが明るくなる。

メルヘンな駅舎がお出迎え。
駅には温浴・宿泊施設 クウィンス森吉が併設されています。
地元自治体 北秋田市の所有で、沿線には前泊した縄文の湯のように温浴施設が点在し、観光拠点となっています。

駅舎に宿泊できる点では、秋田の東京ステーションホテル。駅舎の規模は線内随一です。

阿仁前田温泉駅近くの貯木場

駅南側には木の国 秋田らしい光景

貯木場でしょうか。前身の阿仁合線の建設は、この先の阿仁鉱山で採れる銅や、沿線の木材を鷹巣に運び、奥羽線に積み替え、全国へ輸送するという目的がありました。
前述の温泉も含め、内陸線沿線は天然資源に恵まれた豊かな土地であることが伺えます。

阿仁前田温泉駅を出てすぐの小又川橋梁

小又川橋梁

橋やトンネルなど、地形に抗う眺めは鉄道旅を愉快にしてくれる

また、注目いただきたいのは、橋梁の構造です。
後述の比立内以南の新規建設区間とは、50年近く建設時期がずれており、鉄道建築の技術の進歩を楽しむことができます。

内陸線の第二の魅力に、1つの路線ながら2つの顔を持ち合わせているというのも挙げられます。

8:59 前田南駅

駅手前には足跡が。線路横断をした不届きものに嬉しくなります。

トンネルに入ると排気音がいっそう力強く、耳を楽しませてくれる。

阿仁合までの区間はトンネルは数本。車窓を邪魔される感覚はなく、「出口より先はどうなっているのだろう」と。むしろ良いアクセントになっています。

9:03 小渕着。終点阿仁合までもう一息

地形に導かれながら、わずかな平面をなぞるように列車は進む

視界が狭まり山岳路線の雰囲気が出てきて、

車庫が見えればまもなく、

9:10 阿仁合

9:10 到着!終点 阿仁合

阿仁合駅舎と腕木式信号機

売店、レストランを備えた駅舎は2018年にリニューアルされたもの

腕木式信号機がいい雰囲気を出しています。鷹巣からおよそ1時間、33㎞の旅でした。

阿仁合駅に停車中のAN8800形

左側の急行もりよしに乗り継ぎ

この後、阿仁マタギを目指し、観光の後、内陸線の終点 角館を目指します。

つづく

秋田内陸縦貫鉄道完乗② 阿仁合⇒角館 走る雪原パノラマ
前回はこちら 阿仁合駅 本日は、2022年3月7日(月)、5分の乗り継ぎで急行 もりよしに乗車。 マタギ資料館のある阿仁マタギ駅に立ち寄った後、終点 角館まで参ります。 急行もりよしは、国内ではこの内陸線と秩父鉄道でしか...

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