秋田県 鷹ノ巣
この地名を知ったのは15年前、寝台特急あけぼので青森に向かう道中でした。
これまで連れ添った日本海に別れを告げ、米代川に連れられ、山に分け入る列車を迎えいれた駅が鷹ノ巣。
「鷹がいるような場所なのか」
本州の果てに近づきつつあるのを実感したものです。
そして、本日2022年3月6日(日)、再びその鷹ノ巣へやってきました。
目的は、鷹ノ巣と角館を結ぶ秋田内陸縦貫鉄道に乗るためです。同線は国鉄の不採算路線をルーツに持つ全国で見られる一般的な第3セクター路線なわけですが、全長が100㎞近くと長大、有料の急行列車を運行し、有名Youtuberと協力したプロモーションを行うなど特徴的な路線として関心があり、一度その積極的な経営を覗いてみたいと思っていたのでした。
鷹ノ巣に前泊
秋田から奥羽本線普通列車に乗り込み、18:20鷹ノ巣着。
今日は、鷹ノ巣に前泊し、明朝8:10鷹巣発の内陸線で、阿仁マタギに寄り道をしつつ、角館を目指します。
旅行者界隈ではロングシート車ということで評判が今一つの同車ですが、雪を物ともせず快走してくれました。
秋田駅では曇天でしたが、鷹ノ巣はご覧の天気。
積雪も多く、厳しい気候なのが伺えます。
駅からは徒歩で宿を目指します。
駅前からは商店街が伸びていますが、
アーケードに救われながら、歩くこと30分
本日のお宿に到着。変わった名前ですが、これは付近にある世界遺産 伊勢堂岱遺跡から取られたもの。
余熱を活用した?床暖房が心地よい施設でした。
そして翌日、
良い1日になりそうな予感がしますね!
そしてやってきたのが、秋田内陸縦貫鉄道の鷹巣駅・・・のはずでしたが、雪道に時間を取られ急遽宿近くの西鷹巣駅から乗車することに。
そして、
8:13 西鷹巣
なんとか阿仁合行きに「間に合い」ました←
列車は後ろ乗り、前降り、運賃後払い。単行気動車に揺られ、同線の拠点 阿仁合駅を目指します。
旅のお供は秋田犬
乗客は、私たちを含めて4名。内訳は私服の青年が1名、作業着のおじさまが1名、そして私たちです。平日朝、市街地から郊外へ向かう列車とはいえ、少し寂しいでしょうか。
ただ、この内陸線の車内は不思議と明るい印象を受けるのです。
さらに
ただただかわいいじゃないですか。
これらは、今から5年ほど前、秋田犬っこ列車整備事業という秋田県と協働で行われた取り組みの1つ。インバウンド客をターゲットとして、内陸線を盛り上げることを狙ったのだとか。
地方のローカル線に乗ると、合理化の結果なのでしょうが、車内が無機的だったり、くたびれていたりと、気持ちが沈むことも少なくありませんが、内陸線はちょっと違いますね。良いですよ!
これは凍結となった大館能代空港へのアクセス道路となるはずだった橋脚です。
その工事中、伊勢堂岱遺跡が発掘されたため、道路建設は計画変更、北側を迂回するルートととなりました。
(2022年10月更新)
なお、2月までの期間限定で大館能代空港のキャンペーンで往復で最大10,000円のキャッシュバックが利用可能です。ぜひこの冬に内陸線の旅にご活用されてはどうでしょうか。
https://onair-cbcp.com/
さて、秋田犬の内装と共に内陸線の魅力の1つと感じるのが、前面・後面からの雪景色です。
秋田は、秋田杉のように優良な木材の産地として知られています。年輪が整い、美しさと耐久性を備えた秋田杉は、秋田藩の懐を潤したんだとか。良質な木材が採れる気候なのでしょう。
8:32 合川
急行が停車する簡易委託駅(駅業務を自治体や個人が行う有人駅)で、沿線の拠点駅。阿仁合線開業と共に設置されています。対向列車行き違いのためしばらく停車です。
地元の足として利用されているようで一安心。先頭に移動し、対向列車を待ちます。
こんな風に各方向の眺めが楽しめるパノラマカーであります。
ローカル線は休日の利用状況だけで評価・判断してはならないと教訓を得たのでした。平日朝夕に乗ると、その路線の最も重要な顔に触れられるんでしょう。
こちらも簡易委託駅。前身の阿仁合線の中でも、最初期に開通したのが鷹巣からこの米内沢までの区間です。
寡聞ながら初めて存じ上げたわけですが、どこかで聴いたメロディ。調べれば最近まで中学生の教科書で扱われていたようです。
阿仁川は先述の米代川に合流して、日本海に注いでいます。
西鷹巣で私たちの乗車後、初めての追加の乗客1名。
親子でしょうか。乗り込んできた若い女性をホームで見送る方がおりました。
この時間の利用者の属性はバラバラ。ただ、旅人が皆無のため、本来の内陸線の雰囲気を味わうには良いのかもしれません。
さて、列車は再び快調に南進していきます。
8:55 阿仁前田温泉
メルヘンな駅舎がお出迎え。
駅には温浴・宿泊施設 クウィンス森吉が併設されています。
地元自治体 北秋田市の所有で、沿線には前泊した縄文の湯のように温浴施設が点在し、観光拠点となっています。
駅舎に宿泊できる点では、秋田の東京ステーションホテル。駅舎の規模は線内随一です。
貯木場でしょうか。前身の阿仁合線の建設は、この先の阿仁鉱山で採れる銅や、沿線の木材を鷹巣に運び、奥羽線に積み替え、全国へ輸送するという目的がありました。
前述の温泉も含め、内陸線沿線は天然資源に恵まれた豊かな土地であることが伺えます。
また、注目いただきたいのは、橋梁の構造です。
後述の比立内以南の新規建設区間とは、50年近く建設時期がずれており、鉄道建築の技術の進歩を楽しむことができます。
内陸線の第二の魅力に、1つの路線ながら2つの顔を持ち合わせているというのも挙げられます。
駅手前には足跡が。線路横断をした不届きものに嬉しくなります。
阿仁合までの区間はトンネルは数本。車窓を邪魔される感覚はなく、「出口より先はどうなっているのだろう」と。むしろ良いアクセントになっています。
視界が狭まり山岳路線の雰囲気が出てきて、
9:10 阿仁合
腕木式信号機がいい雰囲気を出しています。鷹巣からおよそ1時間、33㎞の旅でした。
この後、阿仁マタギを目指し、観光の後、内陸線の終点 角館を目指します。
つづく
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