【廃線跡ハイキング】旧福知山線の渓谷に残る鉄道遺産を堪能する

関西

あれこれ立て込んでいた仕事中、ふと思い立ったのでありました。

今週末はどこかで紅葉でも行くしかない!

ただ、その気になってしまったのにどういうことか、天気予報は土日、その翌週の勤労感謝の日まで雨予報・・・

天気予報は変えられない。ならば自分の坑道を変えるしかないではないか!
こうして2022年11月20日(日)、東海道新幹線始発 のぞみ79号に乗り込み、東へ向かう雨雲を突き抜け、関西へ向かったのでありました。

9:13 武田尾駅から

武田尾駅を発車する207系

JR福知山線 武田尾駅

トンネルの中から本日の旅はスタート。

巡るのは1986(昭和61)年に廃線となった国鉄福知山線の旧線跡です。車窓からは渓谷美を堪能できる区間だったのですが、狭あいかつ曲線の多い区間で交通の難所でもありました。

トンネルに挟まれた山間の駅

複線化・電化に合わせて新線切り替えとなり、現在はこの武田尾駅から生瀬駅までの約5㎞の区間がJR福知山線廃線敷というイキングコースとして整備されています。

今回はこちらで、鉄分多めの紅葉狩りをしようという算段なのです。

武田尾駅

周囲には人家も少ない山間の駅だが、結構な頻度で列車がやって来る。

新線は高規格で作られており、特急列車などが高速で通過していきます。色々な楽しみ方ができそうな駅でございます。

名塩隧道

大阪方面に名塩隧道

武田尾駅から武庫川渓谷を眺める

左岸の道路が旧福知山線跡である。

こちらが新旧福知山線の交差地点。

旧線が武庫川の渓谷に寄り添いながら進むのに対し、新線の山を貫き、川を越えてゆく様は対照的でなんとも面白い眺めです。旧線の開通は1899(明治32)年ですから、120年の間に技術が地形を克服できるようになってしまったわけですね。

改札口。無人駅だが、ハイカーで賑わっている。

化粧室もありますが大きくはありません。事前にことを済ませておくのが良いでしょう。

ハイキングスタート!と、その前に

改札を左手に進むとハイキングコース、なのですが鉄の皆さんはそこを我慢して右手に少し進んでみましょう。
道路転用となった旧線のトンネルを見ることができます。

草山トンネル 241m

福知山線 草山トンネル

煉瓦と石材で美しい意匠の入口

「草山T」となんとか判読できる

トンネル内部。車のすれ違いは難しそうだ。

トンネルの出口にある2軒の温泉宿へ出入りする車だけが通行します。中ほどに脇穴が設けられていて、

脇穴

車はLの字のルートでこちらから出てゆきます。それでは福知山線が走っていた直線方向はどうなっているかというと、、

立入禁止(厳密には送迎バスの専用道)。持参の照明を使ってなんとか視界が確保できている。

残念ながら観光客の通行はできません。

ただ、温泉宿方面に歩いてゆくと、トンネルの出口部分を視認することはできます。武田尾駅以北の区間の大部分は自然に還るの待つばかりという感じです。

草山トンネル出口

トンネル出口の上部。線路への落石を防ぐような造りになっている。

温泉宿付近から武田尾駅方面を眺める

廃線敷を歩く

と、前置きが長くなりました、ここからは廃線敷ハイキングコースを歩いていきますよ!

数グループの団体組とスタート。鉄以外の方にも人気スポットであるようだ。

廃線10年前のプレートが残っていた。修繕の記録だろうか。

そして、まず最初の見どころがこちら。

武田尾トラス橋(第一水道橋)。 神戸市水道局の水管橋だ。

1921(大正10)年頃に完成した神戸水道です。
武庫川上流にある千刈ダムから神戸市内へ飲料水を供給している現役の生活インフラです。

所在は宝塚市だが、神戸市の管理用地となっている。

かつては井戸水を生活用水としていた神戸市でしたが、港町として外国からの往来が増加する中でコレラが流行してしまいます。そこで、新たな水源を確保すべく導水管が建設されたのでした。後ほど、改めてご紹介をさせていただきます。

宝塚市立武田尾駅前駐車場

宝塚市立武田尾駅前駐車場

駐車場となったこの空間が、かつての武田尾駅跡。1面2線、側線つきの山間の鄙びた駅だったようです。

旧国鉄福知山線武田尾駅跡

駅のほか、温泉・ハイキング客も利用するのか。

温泉橋

大阪市内から30分強。関西は世俗離れが簡単で羨ましい限りだ。

ここからいよいよ廃線敷の上を歩いていきますよ!

枕木が残る廃線敷。右手の看板には注意事項が書かれている。

良いですねぇ!単線・非電化区間の雰囲気が残っています。

碓氷峠とは異なりレールは剥されてしまっていますが、枕木があるだけでも遊歩道とは違った趣になりますね。

武田尾駅方面を振り返る。線内随一の車窓だったに違いない。

景色も最高。最後まで武庫川と寄り添いながら進んでいきます。

10:26 長尾山第3トンネル 91m

長尾山第3トンネル

コースのメリハリとなる6か所のトンネル群。その1本目。

福知山線のルーツは私鉄の阪鶴鉄道です。その名の通り大と舞を結ぶ路線を計画し、現在歩いている区間を含む尼崎・福知山間を開通させました。
ただ、当時は日露戦争の開戦前夜という状況。舞鶴には旧海軍の鎮守府がありましたから、国家戦略的にも重要な路線に位置づけられていたのでしょう。結局、福知山駅以北の区間は国が建設することになり、阪鶴鉄道も1907(明治40)年に国有化されることとなりました。

草山トンネルと似た構造になっている。

上部がレンガ造りなのは、蒸気機関車の煤汚れが目立たないからでしょうか。構造的な理由かもしれません。

10:30 長尾山第2トンネル 147m

続いて長尾山第2トンネル

長尾山第2トンネル

馬蹄型の入口。半円型の第3トンネルより自信ありげに見える。

材料は煉瓦と石材で変わらないが、煉瓦が綺麗に見えたのは光の加減か。

煉瓦はコンクリートよりも自然に馴染むのは緑が映えるからだろう。

トンネル越しの紅葉は新鮮で美しく見えた。本コースの面白さの1つといえる。

名もなき橋梁を越えると、

区間内随一の切通しへ。

このあたりで多くのハイカーとすれ違うことに。

列車で来られる方が多いからなのか、多くの人とすれ違うタイミングと、不安になるほど一人になる時間がありましたね。

すれ違う方々は老若男女問わない印象

ハイキングコースながら、勾配がほとんどないので歩きやすいですからね。
すれ違いざまには関西弁が耳に入り、このような旅情もあるのだと気づかされます。

このあたりの紅葉がよく色づいていた。

12月1週目くらいにはこの眺めも一変していそうだ。

紅葉の福知山線廃線敷

思わぬ鉄道遺産。50km/hの速度制限標識

列車であれば窓から身を乗り出し、前方の車両を眺めたくなりそうだ。

用途不明の構造物。沢の水を排水溝に流し込んでいたのか。

神戸市導水管

前述の神戸水道と再会。第二水道橋

素直に川筋に沿って歩いてきたところ、山塊を貫いてきた導水管に不思議と悔しさを覚えたり。

10:49 長尾山第1トンネル 306m

長尾山第1トンネル

ここまでと異なり注意書きが目立つトンネル

廃線敷の所有者はJR西日本。施設管理を沿線の西宮市・宝塚市が行っている。

長尾山第1トンネル内部

トンネルは曲線区間に設けられており、出口の明かりを頼りにできない。ライトが必須だ。

トンネル下部は石材が乱積みされている。相当な職人でなければ難しい工事だろう。すごい。

JRはこれが言いたかったのか(震え声)

頭上に心ばかりの意識を寄せながら進みます。これらの危険を乗り越えてゆけば、

ハイキングコースのハイライトがやってきます

10:55 第2武庫川橋梁

1953(昭和28)年竣工のトラス橋

有難いことに水はけが悪く、映えスポットになっていた。

武庫川第二橋梁

足を止める方も多い

横溝尾トンネル

149mの横溝尾トンネルを抜ける。

ここからは武庫川を左手に眺めながら進んでいきます。

武庫川の溝滝

溝滝。このあたりから武庫川を岩塊の間を縫いながら急流の川へと姿を変える。

枕木でジェンガを、いやしいたけ栽培を試みたのか。

24キロポスト(始点 尼崎からの距離を示す標識)。劣化が進んでいる。

擁壁が煉瓦製。すごい。

尼崎・大阪方面を眺める。このあたりから枕木の頭まで地中に埋まるので、歩きやすくなる。

急流で泡立つ川の流れに興味津々な子どもたち。

保線員が使う列車の通行を監視する台か何かか

11:09 跨線水路橋

跨線水路橋

上部を沢の水が流れ、武庫川に注ぐようになっているらしい。

観光マップにも記載がなく、思わぬ出会いとなり困惑したのがこちら。
帰宅後、調べてみると線路への水の侵入を防ぐため設けられた構造物なのだそう。この写真の右側から流れてきた水を、左下の武庫川の谷底へ導いています。

嬉しいサプライズであった。

ハイキング過激派による犯行か、はたまた自然の脅威のせいか。ひしゃげた看板が打ち捨てられていた。

11:14 北山第2トンネル 413m

北山第2トンネル

区間内最長のトンネル。

保線用倉庫の跡だろうか。

11:38 北山第1トンネル 319m

北山第一トンネル

そして区間最後のトンネルへ。

北山第一トンネル内部

危険ではあるが、暗闇を自分の感覚だけを頼りに歩くのも楽しい

トンネルはこれにて終了!ハイキングも終盤に近付いて参りました。

武庫川ダム調査抗跡

左手、対岸に見える謎の構造物

かつて武庫川には治水用のダム建設計画がありまして、その建設予定地がちょうどこのあたり。
構造物はダム建設前の地質調査用のトンネルがあった場所で、計画を感じられる数少ない場所になっています。

なお、90年代頃から調査がはじめられていましたが、沿岸の反対もあり2010(平成22)年に事実上の中止となっているようです。

姥ヶ懐川橋梁

姥ヶ懐川橋梁

石積みの橋脚

武庫川の眺めも終始楽しませてもらった

岩場を活用した見張台。

中国自動車道が見えてくるとゴールも近い

どこへ上るための梯子だろうか。

武庫川渓谷案内

武庫川渓谷案内。武田尾駅側にも欲しかったなぁ。

稲刈りを終えた田んぼを過ぎると・・

11:54 ハイキングコース踏破!

仮設トイレが設けられている

2時間のコースを3時間かけてしまいました。寄り道、撮影が過ぎましたね笑

ここから生瀬駅または西宮名塩駅から電車に乗ることになりますが、往年の福知山線のルートに従い、1㎞先にある生瀬駅を目指します。

国道176号の歩道は非常に狭くすれ違いも難しい。

宝塚市すみれガ丘のマンション

丘陵上のマンションは宝塚市すみれガ丘。大阪方面のベッドタウンという雰囲気

少し前まで渓谷美を楽しんでいたはずが突然、都市郊外の雰囲気に。関東では見られない風景の急変が面白いですねぇ。

当田トンネル 208m

武田尾駅ぶりの新線との再会

国鉄福知山線 当田トンネル

新線よりも一段低く旧線跡が残る。この先、緩やかな下り勾配で武庫川に寄り添っていく。

細谷川橋梁

細谷川橋梁。奥のコンクリート橋上を現福知山線が走る。

12:13 生瀬駅

JR福知山線(宝塚線)生瀬駅

駅舎

と、ハイキングコース終了後も楽しませてくれた福知山線旧線の旅はこれにて終了!

5秒ルール?

停車場中??不思議な看板が気になる生瀬駅であった。

12:23発の区間快速 大阪行きで帰路についたのでありました。

最後に、旧線が現役だった頃の車窓がYoutubeにありましたので、共有してお別れです。
生瀬駅から道場駅までの右側の車窓が映されており、貴重な映像です。

おしまい

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