廃線に惹かれ
人の趣味・嗜好はどういった要因で形成されるのでしょうか。
この疑問は私の中で答えが出ていません。ある車好きの知人に聞いてみても
「分からん。小さい頃からミニカーを握りしめていたらしいからなぁ」
ということで答えは出ませんでした。先天的に刻まれたものなのか、はたまた意識が芽生える以前の強烈な経験によるものなのでしょうか。
ただ、鉄道と歴史好きの私の中には1つ、鮮烈に残る記憶があります。それは、幼少期、鉄道の写真集で見かけた
信越本線の特急あさまを牽引するEF63の姿です。
正面には、「ありがとう・さようなら碓氷線」とありました。
行きつけの赤羽にあった踏切(高架化で廃止されましたが)で、通勤列車に紛れ、鮮やかな車体を高速で走りゆくあさまはスターでした。
そんなあさまが、国内随一の難所を特殊な機関車の随伴で越えているというのですら、小さな憧れはより大きくなります。しかし、同時にその難所は廃線となり、あさま自体も新幹線に置き換えられたことも知りました。
写真にある光景はもうない。多くの人を乗せた長大な編成、きっと機関車を動かすのも大変だろう、その苦労も、そして踏切での心のときめきも。
その時失われたものが、私の何かに深く突き刺されました。今も抜けることはありません。
こうした経験から、信越本線の横川・軽井沢間は、現役当時に訪れたわけでもないのですが、何かと意識される場所となりました。そして、今回、筆を執るに至ったのは、この廃線区間を実際に歩くことができるツアーが開催されているという記事を新聞で見かけ、実際に参加してしまったからなのです。自らの性格形成に影響を与えた碓氷峠
実際に歩き、見たもの、感じたものを、これから参加する皆さんにご紹介していきたいと思います。今回は、その準備編。実際にツアーに参加した際の様子は改めて紹介いたします。
廃線ウォークとは
廃線ウォークは、横川・軽井沢間の廃線区間を所有する安中市の観光協会が主催するツアーです。
今回、何を思ったか、このツアーの上下線いずれのコースも参加してしまった私がご紹介したいと思います。何よりの魅力は、
このツアーでしか立ち入ることのできない
信越本線新線の峠の湯付近・軽井沢の区間を歩くことができる
点です。
コース
- 上り線(峠を下る)軽井沢 9:00発→熊の平→峠の湯 15:30着
- 下り線(峠を下る)横川 11:10発→峠の湯→熊の平→軽井沢 17:00着
費用
6,500円(昼食・保険料込)
ルート図
ややこしいので図説
まずは、いわゆる横軽区間を概観してみましょう。
横軽には、最大3本の廃線があります。
① 開業当時アプト式を用いていた旧線
② アプト式廃止後の新線上り線そして
③ 旧線の一部を改修した新線下り線
が上図のように走っています。このうち
一部はアプトの道という遊歩道として整備されており、これまでも誰でも歩くことができました。また、横川駅・峠の湯間の新線下り線(旧線)は、トロッコ列車「シェルパ君」が運行されています。そして、これら以外の区間は、通常立入禁止ですが、この廃線ウォークに参加すると、その区間を歩くことができるのです。
参加を検討している方
6,500円と1日をかけて参加すべきか否か・・・悩んだ末、このページに辿りついた方もいらっしゃるかと思います。なので、このツアーに参加してみて私が得られたものを参考程度に紹介しますと
- 峠を越えた達成感(何より)
- 66.7‰というピンとこない勾配の厳しさを身を持って知れる
- ほぼ現役のレール上やトンネル内を歩ける面白さ
- ツアー踏破後の湯船の快感
- 観光協会の方の人柄
この辺りにビビッと来る方であれば是非とも参加してみてもらいたいツアーです。
参加を決めたけど色々不安な方
いざ申し込んだものの
「準備はどうしたらいいんだ!」
という方のために
① 服装は?
私(28歳男)が参加した際の天候と服装は以下のとおりでした。
上り線 2月 晴 気温10℃ ほぼ風なし
■上半身 厚手のフリース、ニットとヒートテック
※ 集合時はマウンテンパーカーも着ておりましたが、歩いているうちに暑くなり脱いでしまいました。
■下半身 通常の長ズボンとヒートテック
下り線 3月 雨 20℃ やや風あり
■上半身 マウンテンパーカー、通常のパーカー、ヒートテック
■下半身 ジーンズ、レインウェア
※ リュックと靴は防水カバー着用
この格好であれば、脱ぎ着することで、汗まみれになることも凍えることもありませんでした。靴は、履き慣れた運動靴で問題ないです。
② 持ち物は?
- ヘルメット
→ 借りました。 - ライト
→ ヘッドライトの持参をおススメします。手に持つタイプのライトは煩わしくなります。また、持参する際も、電池切れすると楽しみが半減するので、気をつけましょう。レンタルライトは手持ち式ですが、上下線とも熊ノ平で交換してくれていました。 - おやつ・飲み物
→ 道中は峠の湯でしか購入できません。終盤の活力を左右します。 - マスク
→ トンネル内は埃が舞うこともあるので持参をおススメします。
必携なものはこんなところ。そのほか必要に応じて、カメラ、タオル(温泉も考えて)、手袋、カイロあたりがあれば大丈夫でしょう。
③ 気になるところに答えます
Q. 参加者の年齢層は?浮かない?
若い男性のグループが多い印象です。他には、シニア世代の男女、ハイカー。個人参加の方も多かったです。幅広い世代がいらっしゃるのと、各々が楽しむスタイルの自由度があるツアーなので浮くということはない雰囲気です。
Q. 上りと下りどちらがおすすめ?
甲乙つけがたいところもありますが、やはり下り線
勾配を登っていく方でしょうか。思い立った良し悪しをまとめておくので、ご参考ください。
Q. お手洗いはどうなの?
道中にあるのは熊ノ平駅の仮設のものと峠の湯内のものだけです。
事前にからだを軽くして臨みましょう。
Q. 食事はどうするの?
上り線:熊の平駅 下り線:峠の湯
で、釜めしを食べます。峠の湯では、折りたたみの椅子を貸してもらえるので、食べるところに困ることはありません。
と!ここまで読み進んでしまったあなた!
おそらく背中を押されるのを待っているのではないでしょうか笑
悩むくらいならとりあえず参加しちゃいましょう!
では、そんな風にして決意をした私が、実際に参加した際の様子を次回以降お届けしていきましょう。以下にまとめておきますので、気になる区間を参考にしてください。
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