都内の低すぎるガード下4選 | タクシーもお手上げ…【桁下170cm以下】

関東

「雪が降ると面倒なのに、不思議と喜んでしまうんですよねぇ」

美容師さんと交わしたありきたりな会話、そこに色々思うところがありました。
便利になったこのご時世、不便だからこそ充実した経験を得られることもあるのでは。不便の効用といいましょうか。果たして不便とは悪いことなのか。

別の日、タクシーに乗り込んだ私をとある注意書きが待ち構えておりました。都内では珍しくなったセダンタイプの車両でした。飲み会からの帰り道、にわかにパーソナルな時間が訪れたわけですが、後部座席が窮屈なわけですね。そして、余白を求めるように流れる車窓に目をやる中で、目に飛び込んできたのがこちらです。

お客様へのお願い
この車両の高さは、看板灯を含めますと

172.25㎝になります。下記場所の通行が
できませんのでご了承下さい。
◆・高輪橋架道橋
◆・大田区中央2丁目JRガード下
◆・足立区柳原1丁目東武線ガード下
◆・江東区北砂越中島貨物線ガード下

車のプロたちがお手上げするような強敵ガード下群、なんか楽しい経験ができそうではないですか。

というわけで、タクシーで上の注意書きに興味を持って検索し、ここまで辿りついてしまった皆さまのために、実際の様子をお届けできればと思います。

1 高輪橋架道橋(JR 田町~高輪ゲートウェイ)

高輪橋架道橋

まずはこちら、高輪橋架道橋です。JR高輪ゲートウェイ駅から徒歩5分ほどの場所に位置しており、広大な車両基地を東西に横切ることができます。

桁下は 1.5m、全盛期の総延長はなんと320mと、高さ、長さ共に国内随一の名物ガード下で、”提灯殺し”という物騒な異名を持っています。提灯とはタクシー車両の上部についた看板灯のこと。当のガード本人からすれば、高さを顧みないタクシードライバー、はたまた無理な要求をしているお客様?たちが勝手に自爆特攻をしてくるので、提灯を破壊してしまうわけですが、勝手にこんな名前を付けられてしまってたまったもんじゃないでしょうなぁ。ともかく、人々に強烈な印象を植え付けてきたのが高輪橋架道橋です。2020年(令和2年)3月の様子をお届けしましょう。

驚くべきは交通量の多さです。歩行者はもちろん、数分に一度の頻度で、相当なスピードで車両が通行していくのです。この黒色のセダンなんかはギリギリを攻めています。が、そのアクセルに迷いはありません。

あれ、タクシー?提灯殺し?あれれ??

「親の仇!」

と言わんばかりに、颯爽とタクシーが通過していくじゃありませんか。どうやら数多の犠牲を払ったタクシーサイドが、提灯のサイズを変更してガード下との共存の道を選んだようなのです。面白いじゃありませんか。

ただ時代は無情であります。ガード下は高輪ゲートウェイ近辺の再開発に伴い、西側の一部のガードが撤去されることになりました。架道橋自体も歩行者専用となって、タクシーの通行は不可能になりました。思わぬ形で、提灯殺しのない、平和な時代が訪れたのでありました。その後の様子がこちら、2020年(令和2年)11月の様子です。

高輪橋架道橋

上の親子の写真と同位置で撮影したのがこちら。ルート変更となった山手線・京浜東北線のガードが剥がされてしまいました。

とはいえ、全盛期ほどではありませんが、長大なガード下はまだまだ健在でして、

地域の皆さんにとって、重要な生活道路であることに変わりはないようです。
今後、この道も桁下の高さを一般的な水準に変更する工事が進んでおり、2024年(令和6年)中に現道の歩行者通行が停止され、2031年(令和13年)までに新たな車道、歩道が供用開始となるようです。

2 大田区中央2丁目JRガード下(JR 大森~蒲田)

作尻架道橋

続いての紹介は、作尻架道橋。JR京浜東北線 大森駅から徒歩20分ほどにあるタクシー泣かせのガード下です。

作尻架道橋

高さは1.7m、長さは15mほどでしょうか。高輪架道橋が別格でしたが、住宅街のど真ん中に位置していてとにかく通行量が多い点が特徴です。ガード上を京浜東北線と東海道線が頻繁に往来し、賑やかな雰囲気があるガード下となっています。

作尻ガードを通行する郵便局の配達員さんとカブ

自転車率の高さ!笑 ひやひやしますが、皆さん快走していくので慣れたものなのでしょう。

ガードに施されたゴム緩衝材

特徴のもう一つは天板に施されたゴム緩衝材です。凄まじい数に、鉄道運行を死守せんとするJRの意地を感じます。

作尻架道橋をギリギリで通行する4WD車

作尻ガードを通行するプリウスの個人タクシー

こちらのタクシーも提灯殺し対策済み!

おまけ

立入禁止となった新井宿第一号橋梁

少し逸れますが、実は大森~蒲田にはもう1つの面白ガード 新井宿第一橋梁がありました。
橋梁下を流れる内川にせり出す形で、鉄パイプと鉄板で簡素な歩道が組まれており、これは地元の篤志家が整備されたものだったのだそうです。通行ができた頃、一度だけ通行したことがあるのですが、それはもう過激なもので笑 桁下は約160cmで、首をすくめて歩いていると頭上を轟音で列車たちが駆けていっておりました。さすがに危険な上、保守管理も難しくなっていたのでしょう、2023年頃に立入禁止となってしまいました。

3 足立区柳原1丁目東武線ガード下(東武 堀切~牛田)

足立区柳原ガード下

さて本題に戻りまして、続いてやって来たのはこちら。今回唯一の私鉄線上にあるガード下で、東武スカイツリーライン 牛田駅から徒歩3分ほどのに位置しています。高さは1.7m、長さは5mほどでしょうか。名称は不明でして、ネット界隈では足立区柳原ガード下牛田駅東ガードなど呼ばれております。

前後の道路に比して、作尻架道橋と同様、住宅街に位置しており地元の方の往来していきます。ただ、このエリアは三方を荒川、隅田川が流れているためか通行量はそれほど多くなく、歩行者や二輪車中心の印象です。

足立区柳原ガード下のレンガ橋脚

個々の特筆すべき点は橋脚部。関東大震災、先の大戦を生き延びた煉瓦積みのものが迎えてくれます。1902年(明治35年)に本線が敷設された当時の煉瓦積みと推測され、都心では希少な近代建築でありましょう。

4 江東区北砂越中島貨物線ガード下(JR 旧小名木川~越中島)

第2八右エ門ガード

最後に紹介するのは路線、場所共にマイナーな場所ですが、ここまで読み進まれた方にはご存知の方も多いのではないでしょうか。総武線 越中島支線という貨物線に存在する第2八右エ門ガードです。高さは1.6m、長さは10mちょっとという感じでしょうか。
かつてこの場所にあった小名木川駅を東西に貫くガードとして存在していました。ガードを潜る道を東進すると、三大銀座商店街の砂町銀座商店街に辿り着くことができます。こちらのガード下もまた、地元の方のメインストリートとなっているようです。小名木川駅が廃止され、跡地がマンションやアリオ北砂という商業施設に再開発された折にガードも再整備されたのでしょう。

小名木川駅跡

ガードの上部。写真右手に貨物駅が広がっていましたが、現在は待避線を残すのみとなっています。

越中島支線の小名木川橋梁

余談ですが、小名木川駅北側に残る小名木川橋梁。1929年(昭和4年)完成です。小規模ながら煉瓦の橋脚を持つトラス橋は見事であります。

まとめ

このような通行がガード下がなぜ生まれたか。調べると、最後にご紹介したい第2八右エ門ガード以外の3か所はかつて水路だった場所を暗渠化していることが分かりました。提灯殺しは、江戸から近代にかけて移動手段が水運から陸運に変わってきたその歴史を体感できる場所であったのです。

また実際に現地を訪れると通行の難しさにもかかわらず、多くの方の通行がありました。桁下の低さは、厳しい環境でも何とか道を作ろうとした人々の意地の結晶で、それを体感できるのもまた楽しい時間でありました。不便の効用、皆さんの周りにも隠れているかもしれません。

おしまい

アクセス

高輪橋架道橋(JR 田町~高輪ゲートウェイ)

大田区中央2丁目JRガード下(JR 大森~蒲田)

足立区柳原1丁目東武線ガード下(東武 堀切~牛田)

江東区北砂越中島貨物線ガード下(JR 旧小名木川~越中島)

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